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クレジットカードと借金
クレジットカードは、普段のショッピングから固定料金の支払い、ネットショッピングに至るまで私達が日常生活を送る上で欠かせないものとなっています。
その一方で、「クレジットカードは借金」という声もあるなど、その扱いについて疑問視する声もあるようです。
このページでは、「クレジットカード利用は借金に当たるのか?」という疑問に答えるべく解説をしていきます。
クレジットカードの利用は借金になるの?

まずは、クレジットカード決済の仕組みについて、理解しておきましょう。
クレジットカードの契約は、消費者と販売店、クレジット会社の三者間の契約です。
クレジットカードを使ってお店で商品を購入すると、その商品代金は、契約や規約に基づいてカード会社によってお店に支払われることになります。
お店は、購入代金に応じた手数料をカード会社に対して支払います。
カード利用者は、後日、カード会社に対して利用料金を支払うことになります。
つまり、カード利用者は、商品を手にした時点では、個人の信用に基づいて、カード会社から金銭の立替をしてもらっている状態であると言えます。
事実、クレジットカードを作る際に、消費者とクレジットカード会社は、立替払契約という代金の支払いに関する契約を結んでいます。
ちなみに、このような金銭債務のことを、クレジット債務と呼ぶ場合もあります。
最近では、クレジット債務という用語を目にする機会は減りましたが、かつてはクレジットカードを申し込む際に入力項目として求められるケースもありました。
債務とは
債務とは、一般的には、掛取引によって商品を購入した場合に生じる代金を支払う義務のことを指します。
ただし、法律用語としての債務は、金銭の給付だけを対象としているわけではなく、物品や契約などの行為も含みます。
具体的には、以下のように定義されています。
債務
ある者が他の者に対して一定の行為をすること又はしないこと(不作為)を内容とする義務をいう。義務を負う者を債務者、権利を有するものを債権者と呼ぶ。
出典:wikipedia
金銭を媒介とした取引の場合は、金銭債務と呼び、区別して考えられています。
債務整理の『債務』は、この金銭債務のこと指し、 日常用語としては、借金と同じ意味で用いられています。
掛取引とは
掛取引とは、商品取引の支払い方法の一つで、商品の引渡し時に代金支払いを行なわず、後日、決められた期日までに支払いを行なうことを言います。
商品購入時における掛取引のことを買掛金と言い、商品売却時における掛取引のことを売掛金と言います。
クレジット債務は、後払いの未払金(ツケ払い)であることから、買掛金とよく似た性質を持ちます。
未払金は、会計・経理用語では、本来の営業取引以外の非継続的な取引から生じる債務を対象とする勘定科目とされています。
後でお金を払う義務があるため、貸借対照表では負債として分類されます。
負債
会計用語で、将来的に、他の経済主体に対して、金銭などの経済的資源を引き渡す義務のこと。
出典:wikipedia
会計学で言うところの負債は、他から金銭や物資を借りることであり、債務と同義であると言えます。
これらの観点を踏まえると、クレジットカード利用 = 借金ということになります。
金融庁もクレジット契約は、消費者金融からの借入れと同じ「借金の契約」という見解を示しています。
ローンもクレジットも借金です
私たちは、お店でクレジットカードを提示するだけでお金を支払わずに商品を購入することができます。
しかし、クレジットカードの利用も、消費者金融からの借入れと同じ「借金の契約」です。
その契約に基づいて、あなたは後でお金を支払わなければなりません。
出典:金融庁
しかしながら、クレジットカード利用が借金にあたるかどうかの判断基準については、支払い方法(より具体的には金利の有無)が関係しているという意見・考え方もあるようです。
クレジットカードの支払い方法

クレジットカードのショッピング機能を利用すれば、商品の代金やサービスの利用料金を後払いで購入することが出来ます。
支払い方法には、以下のようなものがあります。
- 一括払い
- 分割払い
- リボルビング払い(リボ払い)
- ボーナス払い
一括払い
一括払い(一回払い)とは、クレジットカードで購入した商品の代金をまとめて一回で支払う返済方式です。
返済時に金利手数料がかかることはなく、一般的なクレジット料金の支払い方法として定着しています。
アメリカでは、一括払い専用のカードをチャージカード、分割払い機能をもつものをクレジットカードと呼んで区別する場合もあります。
分割払い
分割払いは、返済回数を指定し、複数回に分けて返済する支払い方法です。
金利手数料がかからない二回払いの他に、3・6・10・15・20・24・30・36回払いなどの回数を選択することが出来ます。
分割払い(3~36回払い)は、高額商品を購入するときに便利な支払い方法ですが、返済時には金利手数料が発生します。
ただし、分割払いの利用については、店舗側がその支払い方法に対応していることが条件となります。
リボルビング払い(リボ払い)
リボルビング払い(リボ払い)は、利用限度額の範囲内で、毎月決められた一定金額を支払う返済方式です。
毎月の支払い金額は定額(定率の場合もある)なので、買い増しをしても返済額が変わることはありません。
しかし、購入代金が高額になればなるほど、返済期間は長期化し、支払い回数も増えることになります。
支払い回数が増えるということは、その都度、金利手数料が発生することになるため、返済負担が大きくなります。
また、リボ払いは返済総額が分かりにくくなる傾向があるため、利息負担の実感がなくなり、依存しやすくなると言われています。
このような理由から、多重債務に陥る原因の一つとされています。リボ払いの利用に際しては十分に注意をする必要があります。
【関連ぺージ】 リボ払いの借金と債務整理
リボ払いは、繰上返済をすることで、残りの債務を一括で支払う(残一括返済)ことも可能です。
まとまったお金が入った場合は、支払い期間の長期化を防ぐために、繰上返済をすることをおすすめします。
ボーナス払い
ボーナス払いとは、将来のボーナスを見込んで、支払いをする返済方式です。
ボーナス一括払いであれば最長6ヵ月の支払い猶予期間があります。
また、ボーナス2回払いの場合は、最長1年間程度の支払い猶予期間があります。
ただし、ボーナス払いは、ボーナス時期の直近では利用することができない場合もあります。
一括払い・二回払いは、「金利手数料がかからないので借金ではない」とする考え方もあるようですが、金利発生の有無が借金であるかどうかの判断基準になるわけではありません。
法律用語では、借金のことを債務と言います。
債務とは、金銭を借りた者(借主)が貸し手(貸主)に対して、その返還をしなければならない義務のことです。
クレジットカード利用においても、その支払い方法の如何にかかわらず、決められた支払期日には金銭の返還を行う義務があるため、債務であると言えます。
つまり、広い意味では、クレジットカードは借金だと言えるはずです。
ただし、借金と言った場合は、一般的には金銭消費貸借契約に基づく取引を指す場合が多いようです。
金銭消費貸借契約とは
金銭消費貸借契約とは、将来の弁済を約束した上で、金銭を消費するために借り入れる契約のことを言います。
主に、銀行や消費者金融といった金融機関・貸金業者が貸主となって締結される取引のことであり、カードローンや住宅ローンなどがこれに該当します。
消費者金融を規制する法律には貸金業法があり、銀行などの金融機関には銀行法が適用されます。
一般的に借金と言えば、このような金融機関等が提供する金融商品を思い浮かべる場合が多いと思います。
しかしながら、契約書(借用書や金銭消費貸借契約書)を作成した上で行う、個人間でのお金の貸し借りも金銭消費貸借契約として位置づけられます。
通常、金銭消費貸借契約では、あらかじめ利息や遅延損害金などの内容が盛り込まれます。
金銭貸借時の利息や遅延損害金に関する扱いについては、利息制限法という法律で規定されており、元本に応じた上限利率を設定することが認められています。
利息制限法の上限金利
元本10万円未満 | 年20.0% |
---|---|
元本100万円未満 | 年18.0% |
元本100万円以上 | 年15.0% |
この利息制限法の制限利率を超える利息や遅延損害金の契約をした場合、その制限超過部分は、原則無効となります。
立替払契約(クレジット契約)とは
クレジットカードの契約は、金銭消費貸借契約ではなく立替払契約です。
立替払契約(クレジット契約)は、後日クレジットカード会社に返済することを契約した上で行う金銭取引です。
クレジットカードで商品やサービスを購入する場合のショッピング取引については、貸金業法は適用されません。
リボ払い、分割払い、ボーナス払いに対しては、利息を取ることが認められており、割賦販売法が適用されます。
クレジット会社は貸金業者ではなく、立替業務を生業とする割賦購入斡旋業者という位置づけになります。
ちなみに、スマホや携帯電話を購入する際の分割払いも割賦契約です。
クレジットカードのキャッシング機能
クレジットカードには、ATMなどでお金を借りることが出来るキャッシング機能が付帯しています。
キャッシングとは、個人を対象とした無担保での小口融資のことを指し、いわゆる一般的な借金に相当します。
そのため、消費者金融で借りた時と同様に、年18.0%の利息(実質年率)がかかります。
また、キャッシング取引は割賦販売法ではなく、貸金業法が適用されるため、総量規制の対象となります。
総量規制とは、借入総額が年収の3分の1を超えている場合、新規の借入れを制限する仕組みのことを言います。
2010年6月、総量規制は消費者金融の過剰融資を規制するために導入されました。
ショッピング枠とキャッシング枠
クレジットカードには、ショッピング枠とキャッシング枠がありますが、それぞれ扱いが異なります。
ショッピング枠 | キャッシング枠 | |
---|---|---|
用途 | 買い物や支払いなどの決済手段 | ATMなどでの借り入れ |
利息 | あり(分割払い・リボ払いなど)※ | あり |
契約 | 立替払契約 | 金銭消費貸借契約 |
法律 | 割賦販売法 | 貸金業法 |
監督官庁 | 経済産業省 | 金融庁 |
※ 一括払い・二回払いを利用すれば利息が発生することはありません。
ショッピング枠とキャッシング枠は、共に限度額の範囲内で利用することが出来ます。
限度額を超えた場合は、カードを利用出来なくなるため、節度を持った利用を心がけることが望ましいでしょう。
まとめ
「利息が発生する取引 = 借金」というイメージで語られる場合が多いですが、借金とは、将来の金銭的な返済義務を伴う債務であると考えることが出来るため、利息の有無が問題の争点となることはないと言えるでしょう。
たとえば、消費者金融会社の30日間の無利息期間を利用してお金を借りた場合を想定すると分かりやすいかもしれません。
無利息でお金を借りても、借金をしている事実に変わりはありません。
また、金融庁もクレジットカードで商品を購入する行為は「借金」であると位置づけています。
一方、経済産業省は、クレカをはじめとするキャッシュレス支払いの普及を推進するため、「クレジット払い = 借金」というイメージを払拭するよう業界団体に働きかけています。
契約等に基づいてお金を返済する義務が生じる取引は、全て借金であると言えるはずです。
ただし、金利の発生するカードローンやキャッシングとカードのショッピング枠を利用して購入(金利の発生しない一括払い・二回払いに限る)する行為は、同じ借金であっても別物として捉えるべきでしょう。