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代位弁済と第三者弁済
代位弁済と第三者弁済 は、同じようなニュアンスを持つ言葉のため混同されやすいと言われています。
代位弁済や第三者弁済は、カードローンやキャッシングで、返済不能になった場合に行われる行為です。
お金を借りる時はきちんと返済できると思っていても、支払いをしていく過程で行き詰ってしまうことも少なくありません。
借主(債務者)本人が返済不能になった場合は、金銭貸借契約に関係ない第三者でも弁済することが認められています。
ここでは、代位弁済と第三者弁済の意味と違いについて説明をしています。
弁済とは
弁済とは、「債務を弁償すること」「債務を履行して債権を消滅させること」を意味する法律用語です。
これを分りやすく言うと、お金や借りたものを返して、義務を果たすことという意味になります。
債務とは
債務とは、特定の人に対して金銭を払ったり物を渡したりすべき法律上の義務のこと。
一般的には、借金を返すべき義務のことを指す。借金と同義。
債務は、金銭による給付だけでなく、物や不動産などによる弁済も認められています。
『債務の履行』や『債務弁済契約書』『弁済の提供』『代物弁済』などのような使用例が代表的です。
弁済と返済の違い
弁済と返済は、ほぼ同じ意味を持つ言葉ですが、法律用語かどうかでその扱いは異なります。
日常生活では、「借りたお金を返す」ことを意味する「返済」を使用しますが、返済という言葉は法律用語として用いられることはありません。
弁済は法律用語であるため、返済に比べて硬い表現だと言えるでしょう。
そのため、おそらく日常生活で「弁済」という用語を使用する場面は少ないはずです。
弁済 | 返済 | |
---|---|---|
意味 | 債務者が債務の給付を行い、これによって債権が消滅すること。履行と同じ。 | 借りた金や品物を返すこと。 |
用途 | 法律用語 | 日常語 |
基本的に、意味するところはほぼ同じであるため、「弁済」は法律用語、「返済」は日常語と覚えておけばOKです。
第三者弁済とは
第三者弁済とは、債務者(借主)本人に代わって第三者が弁済を行うことを言います。(第474条1項)
民法では、原則、第三者は、債務者に代わって弁済することが認められています。
ここで言う、第三者とは、利害関係を有する第三者のことを指します。
利害関係を有する第三者とは
利害関係を有する第三者とは、主債務者に代わって弁済をしなければ債権者から強制執行(差し押さえ)を受ける者、もしくは、抵当権を実行されるなど自己の権利を失う者のことを指します。
保証人や連帯保証人、連帯債務者などが「利害関係を有する第三者」に当てはまります。
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第三者弁済が出来ないケース
第三者弁済では、代位が認められない場合もあります。
次に該当する場合は、第三者弁済を行うことが出来ません。
- 債務の性質が第三者の弁済を許さない場合
- 当事者が反対の意思表示をした場合
- 利害関係を有しない第三者
債務の性質が第三者の弁済を許さない場合
その人でなければ不可能な給付は、第三者弁済をすることは出来ないとされています。
一例を挙げれば、絵画の制作を目的とする債務において、特定の画家のみが絵画が制作できる場合には、第三者が代わりにその絵画を描くことは不可能であると言えます。
この場合、特定の画家が描いた絵画であることが全てであるため、第三者による弁済は認められません。
当事者が反対の意思表示をした場合
これは、債権者と債務者のいずれか、もしくは両方が第三者による弁済を認めないと意思表示したケースのことを指します。
例えば、契約時に、債権者と債務者との契約において、「第三者の弁済を許さない」と契約書に明記している場合などがこれに当たります。
利害関係を有しない第三者
前述の通り、保証人や連帯保証人、連帯債務者などの利害関係を有する第三者は、主債務者に代わって弁済をすることが出来ます。
ここで言う「利害関係」という意味については、よく注意しておく必要があります。
法律業界における利害関係には、大きく法律上の利害関係と事実上の利害関係の2つがあります。
法律上の利害関係
法律上の利害関係は、主債務者の保証人や連帯保証人、抵当不動産の物上保証人、第三取得者などのことを指します。
事実上の利害関係
家族(親子・兄弟)や親戚、友人、知人などは、法律上の利害関係を有する第三者ではなく、事実上の利害関係として扱われます。
そのため、利害関係を有する第三者でない場合は、主債務者の同意なしに弁済による代位をすることは出来ません。
ちなみに、第三者弁済が、債権者ではなく債務者に対する義務として負う契約は、履行引受と言います。
履行引受
履行引受(りこうひきうけ)とは、第三者が債務者に対して特定の債務の履行を約束すること。債権者の承諾は必要としない。
また、特約がない限り、債権者は履行引受者に直接請求することは出来ない。
履行引受については、民法上の規定はありませんが、第三者が弁済できる場合には認められています。
代位弁済とは
代位弁済とは、弁済による代位という法律効果を伴う弁済のことを言います。
債務者が返済不能に陥った場合は、債務者本人に代わって、保証会社がキャッシングやカードローンの残債を債権者であるクレジット会社やカードローン会社に弁済します。
この一連の行為を代位弁済と言います。
債務者が返済不能(債務不履行)なった際に、債務者本人に代わって弁済することになる保証人や信用保証協会などがその債務者に対して求償権を得ることを意味します。
求償権とは
債務者に代わって借金(債務)を弁済した者が、債務者本人に対して肩代わりした債務分の金銭などを償還請求できる権利のこと。
弁済による代位とは
弁済による代位(民法第500条,第501条)とは、債務者以外の者が弁済した場合、その弁済者が債権者の地位にとって代わることを認める制度のことを言います。
債務者以外の者が弁済した場合に、本来、弁済によって消滅するはずの債権(原債権)と抵当権などの担保権を弁済者に移転し、弁済者がそれらを「求償権の範囲内で行使する」こととし、求償を確実なものにしようとする制度のこと。
代位弁済は、通常、延滞から3ヶ月以上が経過した場合に行われます。
代位とは
代位とは、他人の法律上の地位に代わって、その人の権利を取得し、行使することを言います。
一般的には、債権者が有する原債権を弁済者が取得することを意味します。
弁済による代位の種類
弁済による代位には、以下の2種類があります。
- 法定代位(第500条) … 弁済者に正当な利益がある場合は、当然に代位の効果が発生する。
- 任意代位(第499条) … 債権者の承諾があれば、弁済と同時に代位の効果が発生する。
代位弁済が生ずるためには、債権者の承諾を得るか、弁済を行う上で正当な利害関係を有することが必要となります。
法定代位
法定代位は、債務者に代わって弁済した者は、法律上、債権者の承諾がなくても債権者の権利を代位行使できることを言います。法定代位は、民法第500条に規定されています。
弁済によって、原債権者の有する債権は消滅することになります。
分りやすく説明すれば、第三者が弁済することで、債権者が有していた債権を第三者が取得することと言えます。
法定代位は、正当な利害関係がある場合に行なわれます。
任意代位
任意代位とは、債権者の承諾を得た上で行う代位弁済のことを指します。これについては、民法第499条に規定されています。
債務者のために弁済をした者が債権者に代位する場合は、原則として債権者の承諾が必要になります。
このように、任意代位は、債権者の承諾を得ることで利害関係が生じることになります。
保証人の場合は、あらかじめ第三取得者に対して「代位の付記登記」がなければ代位をすることは出来ません。
代位弁済と第三者弁済の違い
代位弁済と第三者弁済の違いを下表にまとめています。
代位弁済 | 第三者弁済 | |
---|---|---|
概要 | 債務者以外の第三者が「弁済による代位」という法的な効果を伴う債務の履行をすること | 主たる債務者以外の第三者が弁済すること |
代位弁済は、債権者に対して債務の代位を行うことを言います。
第三者弁済は、債務者の代わりに第三者によってなされる弁済のことを言います。
第三者である保証会社が行う代位弁済は、第三者弁済に包括されるものであると考えられます。
つまり、第三者弁済は、代位弁済の上位概念として存在するものであると言えます。
両者を分類する場合、そもそも位置づけが同列ではないという点に注意する必要があるかもしれません。