法定金利、法定利率、約定利率
貸金業者などからお金を借りた場合は、金銭消費貸借契約に基づき返済時には必ず利息が発生します。
また、利息は、民法上、商法上での取引においても発生します。
この利息の利率を決める際に用いられるのが、法定金利や法定利率、約定利率です。
このページでは、それぞれの詳細に焦点を当てることでその違いを説明しています。
法定金利
法定金利 とは、法律で定める利息の上限(上限金利)のことを言います。
貸金業者は、顧客(利用者)と金銭消費貸借契約を締結する際、法定金利内で利息を取ることが認められています。
この法定金利は、利息制限法という法律によって規定されています。
利息制限法
利息制限法とは、一定の利率を超える利息や賠償額を制限するための法律です。
消費者保護の観点から、1954年に高利貸しや暴利行為の取締りを目的として制定されました。
利息制限法の利率は、元本の金額に応じて下表のように区分されています。
借入金額 | 上限金利 |
---|---|
10万円未満 | 20% |
10万円以上~100万円未満 | 18.0% |
100万円以上 | 15.0% |
利息制限法の上限金利を超える金利帯での貸付は民事上無効で行政処分の対象となります。
利息制限法と同様に、貸付金利を取り締まる法律として出資法があります。
出資法
出資法とは、出資金の受け入れを制限し、浮き貸しや高金利などを取り締まるための法律です。
浮き貸しとは
金融機関の職員がその地位を利用し、自己または当該金融機関以外の第三者の利益を図るため、金銭の貸し付け、金銭の貸借の媒介または債務保証をする行為を指す。
1954年に貸金業者(消費者金融・信販会社)などを規制することを目的として制定されました。
正式名称は、「出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律」と言います。
この法律では、不特定多数から出資金を受け入れることを禁止しており、また、金銭貸借の上限金利などを規定しています。
出資法は、貸金業者が年20%を超えて金利を取ることを禁止しています。
利息制限法違反には刑事罰は科されませんが、出資法に違反した場合は刑事罰が科されます。
出資法の上限金利を超える金利帯での貸付は、原則、刑事罰の対象となります。
法定利率
法定利率 とは、法律(民法・商法)によって定められている利率のことを言います。
法定利率によって規定された利息のことを法定利息と言います。
利息を生ずべき債権において、特に利率の取り決めを行っていない場合はこの利率が適用されます。
ただし、カードローンなどの金銭消費貸借上の利息・遅延損害金の約定利率については、民法ではなく利息制限法によって規制されます。
民法404条では、法定利率を年5%と定めていましたが、2020年を目処に行われる法改正により年3%に引き下げられることが決定しています。
法改正後の法定利率は、法務省令で3年ごとに変更される変動制が採用されます。
この民法で規定されている利率のことを民事法定利率と言います。
また、現行商法514条では商事法定利率を年6%と定めていますが、民法改正により商法514条は廃止されることになりました。
そのため、2020年頃には法定利率は、民法が定める年3%に統一されることになります。
民法改正による法定利率の変更点
民法改正によって変更される法定利率の主な変更点は、以下の通りです。
- 民事法定利率は5%から3%に
- 法定利率は3年おきに利率を見直す変動制に
- 商事法定利率は廃止され、民事法定利率に統一される
改正前 | 改正後 |
---|---|
原則:年5%(改正前民法404条) 商事法定利率:年6%(改正前商法514条) | 変動利率(法改正時は年3%)(改正民法404条、附則15条2項) 3年ごとに1%単位で変動し得る(改正民法404条) 商事法定利率は廃止(整備法3条) |
約定利率
約定利率 (やくじょうりりつ)とは、当事者間の契約によって定められる利率のことを指します。
当事者の契約によって生じる利息を約定利息と言います。
基本的には、当事者間の合意があれば、利率を自由に決定することが可能です。
ただし、当事者間で決定することが出来ると言っても自由に設定できるわけではありません。
お金の貸し借りをする場合の利率は、前述の利息制限法によって制限されます。
基本的に、お金の貸し借りは債権者(貸主)側に強い決定権があるため、債務者(借主)が不当な条件を呑まされるケースも珍しくありません。
このような事態を防ぐために、利息の金利については法律によって厳しく定められています。
まとめ
法定金利、法定利率、約定利率の違いをまとめると下表のようになります。
法定金利 | 法定利率 | 約定利率 |
---|---|---|
金銭の貸し借りを対象とする金利 | 民事債権・商事債権に関する利率 | 当事者間で定める利率 |
法定金利と法定利率は、金銭の貸し借りかそれ以外かで分けることが出来ます。
約定利率と法定利率は、当事者間で利率を定めているかいないかで違いを見出すことが出来ます。